一枚の紙と光による、干支をテーマにした作品です。今回は東京スタッフでアイデアを持ち寄り5種類のビジュアル案を制作。社内投票の結果、「雲海の龍」が2024年の年賀状に採用されました。雲の中の龍を紙の繊細なカーブで表現した姿は、幾重にも折り重なることで、まるで時間の経過を一枚に封じ込めたマルセル・デュシャンの絵画のように、軽やかに空を駆ける龍の残像を表現しています。2024年、クリエイティブの海を躍動したいというスタジオテックのビジョンを象徴したビジュアルに仕上がりました。
01紙をえらぶ
01紙をえらぶ
厚み、艶、色、柄、手触り、透過性。無数にある紙から今回の企画に適した15種類を事前にセレクト。それぞれの紙が光により、どのような表情を見せるのか入念に試していきました。「雲海の龍」で最終的に選んだのは竹尾ペーパー「GAコットン2060」。綿の不織布をベースにした柔らかくしなやかな弾力と、艶のない温かな手触り感。適度な透過性による軽やかな印象をもつこの素材から雲の上を駆ける龍を連想していきました。
02手で探る
02手で探る
手の感覚に任せ、あえて不均一な幅や長さに紙を両端から交互に割いていきます。今にも途切れてしまいそうでありながら、しっかりと繋がっている、そんな儚くも力強い生命の様相を表現したいと感じました。切り直して偶然できた糸のような細いラインが龍のヒゲに見えた時、曖昧なイメージが具体性を帯びてきました。
03浮遊感をつくるセッティング
03浮遊感をつくるセッティング
雲の上のような浮遊感を表現するため、被写体はユポを張ったディフューザーフラッグの上に配置しました。ユポはポリプロピレンと天然鉱物から作られるフィルム法合成紙でトレペのような紙目が出ないため、滑らかに光を透過させることができます。
04柔らかく神秘的な光
04柔らかく神秘的な光
使用したライトは3灯。1灯は背景となる空をつくります。下からのライトは雲海を表現した柔らかな光。メインのライトは左奥から紙の曲線のグラデーションを繊細に描きます。床と左奥の2灯の関係を微妙に試行錯誤しながら最適なバランスを探っていきました。ピントを浅くして、中央以外をぼかすことで残像としての龍の躍動感と雲の上の柔らかさを表現し、アングルもあえて正対でなくやや斜めから構えることによって動きをつけました。
雲の切れ目から天に昇る龍を望む作品です。紙の中央の隙間から遠くの対象を捉え、ボケにより柔らかさと奥行きを表現しました。1枚の紙から壮大なスケール感を描きだすことを目指しました。
01特殊紙の個性を活かす
01特殊紙の個性を活かす
紙は表面が偏光タイプのパール紙で、裏面がマットなホワイトの紙を選定。光の角度によるパール感の変化が立体的な効果を与え、手で割くと自然な毛羽立ちが得られるのも魅力でした。水で濡らし一晩乾かして自然なシワや歪みを作り、光の陰影を複雑にすることで雲の立体感を演出しました。
02日の出をつくる
02日の出をつくる
日の出を背景に天に昇る龍を表現する為、奥の光と螺旋状に立ち昇る姿の陰影のバランスを細かく調整していきました。龍は紙の表裏の質感の違いにより豊かな立体感を生み出しています。ホワイトバランスは暖色トーンにより、初日の出をイメージしました。
初日の出を背景に天に昇る龍を表現しました。紙の柔らかな曲線と光のグラデーションによるグラフィカルな美しさを追求した作品です。
01しなやかな弾力性のある紙
01しなやかな弾力性のある紙
S字に曲げたエッジで龍を描く為、紙は最適な形が保持できるよう柔らかくしなやかな弾力性を持つ竹尾ペーパー「GAコットン2060」を選びました。綿の不織布をベースにした艶のない温かな手触り感で、透過すると少しムラがある為、雲のような表情で軽やかさを感じさせたいと思いました。
02逆光感と柔らかなコントラスト
02逆光感と柔らかなコントラスト
紙を丸めた穴に奥から光をあて、太陽に見立てました。絞りを開放しピントを浅くすることで太陽の光を滲ませながら全体に柔らかい表情を作っています。左奥からのライトと床面のバウンスライトにより、逆光を感じつつ、低めのコントラストで繊細なグラデーションを表現しました。
風になびく紙の一瞬を捉え、しなやかなラインで空を駆ける龍の躍動感を表現した作品です。予測できない自然の動きの偶然性をテーマにしたアイデアです。
01軽くて長い紙
01軽くて長い紙
風による揺らぎで、龍を表現する為に、紙には軽さとしなやかさと長さが必要でした。探し出した紙は、書道用の大判の画仙紙。それを10㎝幅で二股にし、130㎝の長さでスタンドに吊り下げ、下からドライヤーで風を送りながら動いている紙の瞬間を撮影しました。
022色の光を混ぜる
022色の光を混ぜる
シャッタースピードを遅く設定しブレにより躍動感を表現。照明は2灯で、左奥の定常光にアンバーのフィルターをかけ、手前のストロボの青みとのミックス光で視覚的な奥行きを演出しました。美しいカーブを描くまで何度も撮影を繰り返した鏤骨の作です。
トグロを巻きながら天に昇る龍を下から捉えた作品です。円錐形に丸めた紙にカメラを挿入し、撮影することで不思議なスケール感と幻想的な世界を表現しています。
01繊細な光沢感
01繊細な光沢感
紙は小動物の体毛のような繊維が光沢感のある不織布、竹尾ペーパー「テーラー白」を採用しました。逆光に照らされた部分が光の粒子のように反射し、フレアをあえて作ることで、太陽を見上げた眩しさのような燦然たる印象になりました。
02ミニマムな構成
02ミニマムな構成
円錐形に丸めた先端の小さな穴から強い光を差し込ませながら、紙面は外から拡散された光が柔らかく透過。紙のエッジの影が弧を描くことで、天に昇る龍のイメージを引き出しています。ミニマムな構成でありながら、スケール感のある世界を表現する面白さを探究しました。